ROBBA BIANCA
(ロッバ・ビアンカ)
Southern Italian Ceramics
「ロッバ・ビアンカ(robba bianca)」とは、イタリア語で「白いもの」を意味する呼称であり、南イタリア・プーリア州、とりわけグロッターリエの陶芸史において、16世紀後半以降の技術的成熟と生活文化の洗練を象徴する重要なカテゴリーです。
その基盤にあるのは、酸化スズを加えた不透明な白釉(白錫釉)を施し、素焼きと本焼きの二度焼成によって完成させる、いわゆるマヨリカ技法に連なる製作体系です。ただし、絵付け装飾を主とする華やかなマヨリカとは異なり、ロッバ・ビアンカは装飾性を抑え、器そのもののかたちと白の質感に価値を見出した、地方的かつ実用的な展開として位置づけられます。
この様式の美は、プーリアの大地が育んだ力強い赤土(terra rossa)と、それを包み込む柔らかな白釉との対比にあります。釉層の奥にわずかに感じ取られる土の温もり、あるいは長年の使用によって縁や高台から覗く赤褐色の胎土は、均質さとは異なる、この土地ならではの白の表情を静かに物語っています。
当時のプーリアにおいて、陶器の色は用途と社会的役割を示す指標でもありました。調理や貯蔵を担った黄釉や緑釉の器が日常の下働きに用いられたのに対し、ロッバ・ビアンカは食卓を彩るための「見せる器」として扱われました。とりわけ、婚礼の際に花嫁が持参する食器一式(コレード)に白い器を揃えることは、家庭の品位や豊かさを示す重要な象徴であったとされています。
18世紀から19世紀にかけて、その造形は波縁皿(フェストーネ)のような装飾的な器から、深皿や鉢といった簡素な日用器へと幅広く展開しました。壊れた器を金属のワイヤーで継ぎ止め、繰り返し使い続ける修復技法「クオンツァ・ピアット(cuonza piatt')」の存在もまた、ロッバ・ビアンカが消耗品ではなく、世代を超えて受け継がれる価値ある器であったことを雄弁に物語っています。
今日に至るまで、グロッターリエの職人たちが守り続けてきたこの「白」は、南イタリアの強い陽射しのもとで育まれた歴史と、日々の営みへの敬意を、静かに現代へと伝えています。










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